卒後教育セミナー
消化器外科領域の術後合併症とその対策―胸部食道切除術―
鶴丸 昌彦
虎の門病院消化器外科
胸部食道癌3領域郭清の術後合併症と対策について述べた.術後合併症としては,呼吸器合併症,循環器合併症,縫合不全,反回神経麻痺が主なものである.呼吸器合併症では肺炎,無気肺,肺水腫などによる低酸素血症が22.5%に見られた.肺水腫は準肺水腫状態まで含めると高頻度に発生する.胸管を合併切除することで低タンパク血症,血管内脱水となる傾向にあり,術中から多めの輸液を要するため,refilling期にはhypoxemiaとなる.dopamine,albuminや利尿剤投与で十分対処できる.肺水腫を恐れてdry sideに管理すると頻脈,血圧低下など循環不全となるので術中輸液は7~8 ml/kg/hrは行う.頻度は3.3%と少ないが肺動脈塞栓症は常に念頭におく.術中からpneunatic cuffの使用やheparin投与を行う.喫煙者や反回神経麻痺の症例では呼吸器合併症が有意に高くなるので注意を要する.術後合併症は手術のテクニックによることが多いので丁寧な手術を心がける.
索引用語
postoperative complications, three-field lymph node dissection, pulmonary complication
別刷請求先
鶴丸 昌彦 〒105 港区虎ノ門2-2-2 虎の門病院消化器外科
受理年月日
1995年11月15日
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