症例報告
胃,十二指腸,および空腸瘻を合併した難治性膵膿瘍の1例
猪飼 伊和夫*, 松谷 泰男, 鎌田 壽夫
大樹会回生病院外科, *現・京都大学第2外科
急性膵炎術後の膵膿瘻に胃,十二指腸,空腸瘻を合併し,治療に難渋した1例を経験した.症例は33歳の男性.多飲歴があり,また幽門側胃部分切除,結腸後胃空腸吻合術の既往がある.急性出血性膵炎に対し膵床ドレナージ術を施行後,第2週に膵膿瘍を合併し,絶食,高カロリー輸液などの保存的加療を施行した.第8週に胃,十二指腸,空腸輪出脚に多発性消化管瘻が形成されたが,保存的加療により膿瘍の縮小とともに瘻孔は自然閉鎖した.しかし,不規則な網目状の膿瘍腔の拡大とともに再度胃および空腸瘻が再発したため,膵膿瘍ドレナージ,瘻孔閉鎖術を施行した.術後再び空腸瘻を形成したが.膵膿瘍の消退とともに瘻孔は自然閉鎖し,軽快退院した,膵膿瘍に随伴する多発上部消化管瘻のまれな症例を経験したので報告した.
索引用語
acute pancreatitis, pancreatic abscess, enterocutaneous fistula
別刷請求先
猪飼伊和夫 〒606-01 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学医学部第2外科
受理年月日
1995年10月11日
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