症例報告
大腸イレウスを初発症状とした膵尾部癌長期生存の1例
小林 道也, 松浦 喜美夫, 荒木 京二郎, 柏井 英助, 遠近 直成, 中村 生也, 緒方 卓郎
高知医科大学第1外科
症例は52歳の女性.平成元年3月頃より腹痛とくりかえす便秘,下痢が出現した.5月21日に腹痛,嘔吐出現し腸閉塞の診断で近医入院.注腸造影検査で結腸脾彎曲部に狭窄を認め,大腸癌の診断で6月16日当科入院となった.Carbohydrate antigen 19-9が1,260 U/ml(<38),ferritinが150 ng/ml(10~80)と上昇していた.6月26日に横行結腸に人工肛門を造設した.内視鏡検査では著明な狭窄を呈していたが,生検では悪性細胞を証明できなかった.7月11日に根治手術を施行した.大腸に狭窄をきたしていた部は脾下極,膵尾部と一塊となり,腎前面の被膜の術中迅速病理診断で高分化型腺癌が証明された.左半結腸と膵尾側切除,左腎摘出術を施行し,さらに腎動脈根部,下腸間膜動脈根部を含め大動脈周囲に10 MeV,25 Gyの術中照射を施行した.組織学的検索で膵癌が証明された.術後6年を経過した現在再発の徴候を認めず,外来通院中である.
索引用語
pancreas tail cancer, colonic obstruction due to pancreas cancer, long-term survivor of pancreatic cancer
別刷請求先
小林 道也 〒783 南国市岡豊町小蓮 高知医科大学第1外科
受理年月日
1995年10月11日
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