肝細胞癌切除例における肝生検組織像を用いた術前リスク評価―HAI scoreの有用性―

吉留　伸郎, 田辺　元, 塗木　健介, 上野　信一, 浜之上　雅博, 栗田　光一, 愛甲　孝

鹿児島大学第1外科

　肝細胞癌58例を対象に術前針生検で得られた非癌部肝組織のhistological activity index（HAI）scoreを算出し，肝切除リスク評価としての有用性を検討した．HAI scoreは術前AST，ALT，総ビリルビン値，プロトロンビン時間と相関を認めなかったが，ICGR15，ZTT，γ-グロブリン，IV型コラーゲン7S，門脈圧，術中出血量とは相関した（p＜0.01）．術後合併症発生群のHAI scoreは10.1±2.6と経過良好群の7.9±4.5に比べ明らかに高く（p＜0.05），術後合併症発生に関するロジスティック解析ではHAI score中のカテゴリーIV（線維化）が高い関連を示した（オッズ比2.74，p=0.011）．2区域以上の切除例ではHAI score 6以上，1区域または亜区域切除例ではHAI score 10以上に術後合併症が頻発した．以上より，肝細胞癌症例における非癌部肝組織のHAI scoreは，肝切除術式選択，術後合併症発生の予測に有用であると思われた．

索引用語
histological activity index score, hepatocellular carcinoma, risk prediction, hepatic resec tion, postoperative complication

別刷請求先
吉留　伸郎　〒890　鹿児島市桜ケ丘8-35-1　鹿児島大学医学部第1外科

受理年月日
1995年12月6日

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