特集
手術侵襲による血行性転移促進についての検討
渡邊 英章, 岡原 仁志, 東山 明憲, 菅野 雅彦, 西村 和彦, 榊原 宣
順天堂大学第1外科学教室
手術侵襲が血行性転移を促進するか,促進するならばそれを抑制する方法はないかを実験的,臨床的に検討した.実験的検討には,マウスの尾静脈より腫瘍細胞を移植する肺転移モデルを用いた(n=5).開腹手術侵襲後,転移結節数は増加したが,OK432を術前経口投与すると,結節数は増加しなかった.BRMの術前投与が手術侵襲による転移促進を抑制したと考えられた.そこで,胃癌手術例146例を対象とし臨床的検討を行った.Con A刺激リンパ球幼若化能はStage III,IVで,NK活性はStageにかかわらず術後低下していた.これに対して,OK 432 5 KEを術前,5回経口投与した群(n=61)のリンパ球幼若化能はStage III,IVで,NK活性はStage IIIで,術後の低下が抑制された.これらのことから血行性転移の抑制に対してNK細胞は大きな役割を演じており,手術侵襲によるその機能低下が,術後の転移促進の原因の1つと考えられた.BRMの術前投与は機能低下を抑制し,転移を抑制する可能性が示された.
索引用語
hematogenous metastasis, surgical stress, NK activity, BRM
別刷請求先
渡邊 英章 〒113 東京都文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部第1外科
受理年月日
1995年11月15日
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