Protease inhibitorおよびproton pump inhibitorを用いた膵癌治療に対する新しい制癌治療戦略

太田　哲生, 中川原　寿俊, 荒川　元, 二上　文夫, 月岡　雄治, 北川　裕久, 萱原　正都, 永川　宅和, 宮崎　逸夫

金沢大学医学部第2外科

　ヒト膵癌細胞3株（Capan-1，BxPC-3，MIAPaCa-2）におけるserine proteaseの発現からみた肝転移能ならびにprotease inhibitorであるFOY-305投与による肝転移抑制効果をヌードマウスを用いた脾内移植法による肝転移モデル実験で評価した．さらに，vacuolar type proton pump（V-type ATPase）発現の有無を検索し，そのinhibitorであるbafilomycin A₁による浸潤抑制効果をmatrigel invasion chamberを用いたchemoinvasion assay法で評価した．その結果，膵癌の転移能はtrypsinogen 1（cationic type）の発現とよく相関し，その転移発生率はFOY-305投与で有意に抑制された．さらに，膵癌の浸潤能はbafilomycin A₁によって有意に抑制された．以上の成績より，ヒト膵癌の浸潤・転移に際しtrypsinogen lとV-type ATPase発現が重要な役割を演じていること，さらに浸潤・転移の制御法としてproteaseおよびproton pumpのinhibitorを用いた治療法の有用性が示唆された．

索引用語
pancreatic cancer, vacuolar-type H⁺-ATPase, bafilomycin A₁

別刷請求先
太田　哲生　〒920　金沢市宝町13-1　金沢大学医学部第2外科

受理年月日
1995年11月15日

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