リンパ系静脈交通と肝転移―腸間膜リンパ管閉塞に伴う新たな転移経路の実験的検討―

山形　健一, 熊谷　一秀, 清水　浩二, 増尾　光樹, 西田　佳昭, 安井　昭

昭和大学豊洲病院外科

　消化器癌の肝転移経路を検討する目的で，Wistar系ラットを用い腸間膜リンパ管切離モデル，腸間膜リンパ管閉塞モデルを作製し，術後経時的に腸間膜リンパ管造影を行い，リンパ流の形態学的変化を検討した．リンパ管の切離後の再疎通は術後4日目より認められ術後6日目にほぼ成立したが，リンパ管閉塞モデルでは5例全例において術後6日目に腸間膜におけるリンパ系静脈交通を認め肝臓が造影された．また大腸癌同時性多発肝転移臨床例において術中に腫瘍近傍リンパ節より微粒子活性炭を注入し，同時に切除予定範囲の腸間膜静脈より挿入留置したシリコンチューブより門脈血を採取し検討すると，門脈血中に微粒子活性炭が多数認められた．リンパ管閉塞によるリンパ系内圧の上昇は，リンパ系静脈交通を生ぜしめ，リンパ系を介した腫瘍細胞の門脈内流出の可能性を示唆するものと考える．

索引用語
lymphatico-venous communication, hepatic metastasis, lymph vessel obstruction

別刷請求先
山形　健一　〒135　江東区豊洲4-1-18　昭和大学豊洲病院外科

受理年月日
1995年11月15日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です