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第29巻 第5号 1996年5月 [目次] [全文 ( PDF 848KB)]
原著

1,2-Dimethylhydrazine誘発ラット大腸癌の発癌過程における細胞増殖動態の経時的変化

横山 登

昭和大学医学部外科学教室(主任:草野満夫教授)

 大腸癌の発生過程における背景粘膜の細胞動態の経時的変化が癌発生のパラメーターになりうるかについて,1,2-Dimethylhydrattne誘発ラットを用い,その経時的に施行して得た内視鏡下生検材料をPCNA標識率,proliferation index(以下,P.I.と略記)にて検討した.PCNA標識率,P.I.は,肉眼的に確認できる腫瘍発生前より上昇し,対照群より有意に高値であった(p<0.05).PCNA陽性細胞は,発癌率が上昇するに従ってcrypt底部より表層に移行した.剖検時における発癌群と非発癌群では,発癌群のみにaneuploidy(10.3%)を認め,PCNA標識率(55.3±12.8%)とP.I.(32.1±5.5%)は非発癌群より有意に高値を示した(p<0.05).背景粘膜の細胞増殖動態の変化が生検部以外の癌の存在を暗示していると思われた.そして,PCNA標識率が55%以上,P.I.が30%以上,DNA ploidy patternがaneuploidyの背景粘膜は,high risk mucosaの状態にあり,これらの変化が癌発生のパラメーターになりうることが示唆された.

索引用語
1,2-Dimethylhydrazine-induced colon cancer in rat, DNA ploidy, proliferating cell nuclear antigen labeling index

日消外会誌 29: 1004-1012, 1996

別刷請求先
横山 登 〒142 品川区旗の台1-5-8 昭和大学医学部外科学教室

受理年月日
1995年12月6日

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