術後早期の急性肺塞栓症の1例

曳野　肇, 中川　正久

島根県立中央病院外科

　症例は62歳男性．残胃早期胃癌および胆嚢結石症に対し，1995年2月6日胃全摘術および胆嚢摘出術を施行した．術後第2病日安静臥床時に突然意識消失，全身痙攣を来たした．PaO₂ 20 mmHgと著明な低酸素血症を認めたが，胸部X線や心電図では明らかな所見はなかった．胸部造影CTおよび肺動脈造影にて，右肺動脈主幹部に巨大血栓を認め，また肺血流シンチにて特に右肺に多発する楔状の血流欠損部位を認め，急性広範型肺動脈塞栓症と診断した．治療は右大腿静脈から右肺動脈に留置したカテーテルより，ウロキナーゼ，ヘパリンを持続注入したが，早期離床と下肢静脈遊離血栓の再塞栓を予防するため，発症2日目に下大静脈フィルターを留置した．経過は良好で，合併症はみられず，3月13日に退院した．術後の肺塞栓症においては，血栓溶解療法および抗凝固療法に加え，発症早期に下大静脈フィルターを組み合わせることが，有効な治療と再発予防につながると考えられた．

索引用語
pulmonary embolism, inferior vena caval filter, postoperative complications

別刷請求先
曳野　肇　〒693　出雲市今市町116　島根県立中央病院外科

受理年月日
1996年1月10日

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