原著
食道癌におけるepidermal growth factor receptor過剰発現と細胞増殖能に関する検討
山下 潤, 渡辺 明彦, 澤田 秀智, 山田 行重, 志野 佳秀, 山田 貴, 松田 雅彦, 三和 武史, 中野 博重
奈良県立医科大学第1外科学教室
当科にて切除された食道癌60例の原発巣を対象として,epidermal growth factor receptor(EGFR)の過剰発現を免疫組織化学的に検討した.EGFRの発現はおもに癌細胞の細胞膜上に認められ,その陽性率は48%であった.臨床病理学的因子との関連では,リンパ節転移度,組織学的進行度との間に相関が認められた.またEGFR陽性例は陰性例に比較して有意に予後不良であった.一方,EGFRの発現と細胞増殖活性との関連を検討するために,連続切片を用いてPCNAの免疫染色を行い,そのLabeling lndexを測定したところ,両者の間に相関は認められなかった.さらに,原発巣の一部をヌードマウス皮下に移植し,その生着性や増殖態度を検索したが,EGFRの過剰発現と生着率,発育態度およびダブリングタイムとの間に関連は認められなかった.以上より,食道癌におけるEGFR過剰発現は増殖能には関与せず,主として転移に関連する因子に作用し,これを促進させる方向に機能する可能性が示唆された.
索引用語
epidermal growth factor receptor, esophageal carcinoma, proliferating cell nuclear antigen, nude mouse
日消外会誌 29: 1583-1590, 1996
別刷請求先
山下 潤 〒634 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
1996年2月14日
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