原著
発生様式からみた多発性肝細胞癌の画像および病理組織所見に関する検討
安藤 修久, 原田 明生, 安井 元司, 野浪 敏明, 中尾 昭公, 高木 弘
名古屋大学医学部第2外科
多発性肝細胞癌の切除例を,直径2 cm以下の結節に限定して,多中心性発生(sMO群:19結節)と肝内転移(sIM群:28結節)に分類し,その画像診断と病理所見を比較した.超音波検査では,sMO群は高エコー像を示す結節が13例(68%)とsIM群の6例(21%)に比べて有意に多かった.造影検査では,造影されなかった結節が,sMO群では造影CTで14例(74%),血管造影検査で13例(68%)と,sIM群でのそれぞれ7例(25%),10例(36%)に比べて有意に多かった.一方,病理組織では,sMO群では16例(84%)を高分化肝細胞癌が占め,脂肪化または淡明細胞化を15例(79%)に認めた.これは,本研究におけるMOの定義からして当然の結果であるが,このsMOの病理所見が画像の特徴に関連していると考えられた.多発性肝細胞癌の発生様式は術前術中に診断可能な例が多く,これらを考慮することは術式を含めた治療法の選択に有用と思われた.
索引用語
multiple hepatocellular carcinoma, multicentric occurrence, intrahepatic metastase
日消外会誌 29: 1623-1628, 1996
別刷請求先
安藤 修久 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第2外科
受理年月日
1996年3月6日
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