原著
肝細胞癌肝切除術後早期の大量腹水発生因子に関する臨床的検討
原田 雅光, 余喜多 史郎, 高木 敏秀, 阪井 学, 大西 隆仁, 三宅 秀則, 石川 正志, 福田 洋, 和田 大助, 田代 征記
徳島大学医学部第1外科
肝切除後早期の腹水発生関連因子につき検討した.1985年1月から1993年12月までの肝細胞癌肝切除例中77例を対象とし,術後腹腔ドレーンからの1日最大総排液量が500 ml未満をA群(53例,68.8%),500 ml以上をB群(24例,31.2%)に分類した.両群間(A vs B)で有意差を認めたものは,術前因子でChE(0.58±0.21 vs 0.45±0.15ΔpH),ICGRmax(1.15±1.01 vs 0.78±0.42 mg/kg/min),総合的Risk(2.35±0.64 vs 2.65±0.43),術中因子で手術時間,出血量,輸血・輸液量,術後因子で組織学的肝硬変度であった.両群間で,アプローチ法,肝阻血法,阻血時間,脱転操作の有無,切除部位・範囲,切除重量に有意差はなかった.術後大量腹水の発生にはChE,ICGRmax,総合的Risk,肝組織の硬変度が重要であり,長時間手術や術中出血量,輸血・輸液量の多い症例に好発した.術後管理は,体液バランスと肝機能保護,術後合併症予防とその治療が重要と考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, postoperative massive ascites, hepatectomy
日消外会誌 29: 1636-1642, 1996
別刷請求先
原田 雅光 〒770 徳島市蔵本町2-50 徳島大学医学部第1外科学教室
受理年月日
1996年2月14日
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