消化器外科周術期の真菌血症の検討

土師　誠二, 宇佐美　真, 平井　昭博, 阪田　和哉, 小谷　穣治, 磯　篤典, 金丸　太一, 笠原　宏, 山本　正博, 斎藤　洋一

神戸大学医学部第1外科

　大侵襲の消化器外科周術期の真菌血症の発生について検討した．対象は臓器真菌症を有さない胸部食道切除6例，胃全摘12例，膵切除4例で，術前，術後2，10日目に末梢静脈血を用いて細菌培養，カンジダ抗原価（Cand-Tec），β-D-glucan値（トキシカラー値とエンドスペシー値の差）を測定し，真菌血症の診断を行った．カンジダ抗原価，β-D-glucan値陽性率は2 PODにはともに42.8％と有意に上昇し（p＜0.01），カンジグ抗原価は10 PODにさらに増加するのに対し，β-D-glucan値は減少し，一過性の上昇を示した．血液培養は全て陰性だった．術式別では食道切除術で陽性率が高かった．陽性群と陰性群で比較すると，カンジグ抗原価陽性群は手術侵襲が大きく，低栄養の症例が多かった．以上より，消化器外科手術後早期には培養陽性とはならぬが一過性の真菌血症が生じ，手術侵襲の程度や栄養状態と関連し，microbial translocationの可能性が強く示唆される．

索引用語
perioperative fungemia, microbial translocation, gastrointestinal surgery, Cand-Tec, β-D-glucan

別刷請求先
土師　誠二　〒650　神戸市中央区楠町7-5-2　神戸大学医学部第1外科

受理年月日
1996年2月14日

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