症例報告
空腸癌術後高カロリー輸液中に発症し重篤な全身症状を呈したビタミンB1欠乏症の1例
村元 雅之, 宇佐見 詞津夫*, 大久保 憲**, 佐竹 章*, 松垣 啓司, 荻野 憲二, 犬飼 昭夫, 真辺 忠夫***
員弁厚生病院外科, 刈谷総合病院外科*, NTT東海総合病院外科**, 名古屋市立大学第1外科***
空腸癌術後高カロリー輸液(total parenterai nutrition:TPN)中に発症し,重篤な全身状態を呈した代謝性アシドーシスの1例を経験した.諸検査値から糖尿病性ケトアシドーシスや腎不全などの他の高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスは否定され,しかも重炭酸ナトリウムの投与が無効なこと,ビタミン製剤が投与されていなかったことなどからビタミンB1(以下,vit. B1)欠乏による代謝性アシドーシスが疑われた.活性型vit. 1投与により代謝性アシドーシスは急速に改善し,それに伴い全身状態も改善された.TPN中の代謝性アシドーシスの原因として糖質負荷によるvit. B1の消費亢進が従来から挙げられており,そのほかにも悪性腫瘍・化学療法・放射線治療などの背景により潜在的vit. B1不足が存在し,そこに供給不足が加わると数週間で発症することが多い.以上より手術後で経回摂取が不十分な時期には,積極的にvit. B1を投与する必要があると考えられた.
索引用語
vitamin B1, metabolic acidosis, jejunal cancer
日消外会誌 29: 1688-1691, 1996
別刷請求先
村元 雅之 〒511-04 三重県員弁郡北勢町阿下喜751 員弁厚生病院外科
受理年月日
1996年2月14日
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