症例報告
開腹下腎摘出術後に発症した成人腸重積症の1例
小出 紀正, 二村 雄次, 神谷 順一, 近藤 哲, 梛野 正人, 宮地 正彦, 秋山 裕人
名古屋大学医学部第1外科
術後成人腸重積症の約9割は胃切除術後であり,腸管に操作を加えない症例での発生はまれである.今回,左腎腫瘍の診断で開腹による左腎摘出術後に発症した成人腸重積症を経験したので報告した.症例は59歳の女性で,術後5日目よリイレウス症状が出現し,イレウス管による減圧で症状は軽快した.小腸造影では空腸に長い狭窄像と肛門側腸管内に腫瘤状陰影を認め,腹部超音波検査ではmultiple consentric ring signを認め,腸重積症と診断し,術後19日目に再手術を施行した.トライツ靭帯から約60 cmの空腸に順行性五筒性腸重積を認めた.用手的に整復を行い,先進部は約10 cm程の強く癒着屈曲した空腸であった.この空腸の癒着剥離は困難であり,また腸問膜側に炎症性の硬結も認めたため,同部位を切除した.切除腸管には腫瘍性病変を認めなかった.自験例は腎摘出術後の腸管癒着を起因として発症したまれな腸重積症であった.
索引用語
postoperative complication, intussusception, adult
日消外会誌 29: 1702-1705, 1996
別刷請求先
小出 紀正 〒486 春日井市上八日町6363 春日井市民病院外科
受理年月日
1996年2月14日
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