原著
胃液,胆汁あるいは膵液逆流による逆流性食道炎,Barrett食道,腺癌の発生に関する実験的検討
川浦 幸光, 川上 和之, 岩上 栄
石川県済生会金沢病院外科
胃液,胆汁,膵液の逆流モデルを作製して,逆流性食道炎,Barrett食道,食道線癌に至る経過を6年以上にわたって観察した.雑種成大犬を用いて胃液のみの逆流群(A群),胆汁のみの逆流群(B群),膵液のみの逆流群(C群).単開腹のみの群(D群)を作製した.A群では12頭中8頭において手術から平均38か月後にBarrett食道を認めた.手術から平均52か月後,3頭にDysplasiaを認めた.手術から72か月後.1頭において腺癌を認めた.B群では14頭中6頭いおいて手術から平均23か月後にBarretrr食道を認めた.手術から平均41か月後.4頭にDysplasiaを,手術から60か月後,1頭において腺癌を認めた.C群ではBarrett食道,腺癌ともに認められなかった.A,B群で認められた腺癌はいずれも高分化型で隆起型の癌であった.以上の結果,胃液あるいは胆汁の逆流でBarrett食道や線癌が発生するが,膵液のみの逆流では生じない可能性を示唆した.
索引用語
reflux of gastric juice, reflux of bile juice, reflux of pancreatic juice, Barrett's esp[jagis, esophageal adenocarcinoma
日消外会誌 29: 1721-1728, 1996
別刷請求先
川浦 幸光 〒920-03 金沢市赤土町ニ13-6 石川県済生会金沢病院外科
受理年月日
1996年4月3日
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