症例報告
胃切除術後の門脈大循環短絡症の2例
板東 隆文, 豊島 宏
日赤医療センター消化器外科
消化性潰瘍に対する胃切除術後21年と31年を経て,門脈大循環短絡のため高アンモニア血症と脳波異常を伴う高度意識障害を呈した2例を経験した.58歳と65歳の男性で,2例とも神経学的に異常を認めず,ICGを除く肝機能は正常で,経動脈性門脈造影で胃冠状静脈と左腎静脈の間に太い短絡を認めた.解除術中に測定した門脈圧はおのおの140 mmと103 mm salineで正常範囲内にあり,肝の組織検査で肝硬変を認めなかった.2例とも短絡解除術直後から血中アンモニア値は正常となり,高度の意識障害は著明に改善した.短絡解除術前みられた肝萎縮,肝動脈末梢のcorkscrew像が消失し,ICG停滞率も改善した.著者らは,門脈大循環短絡は胃切除術後の胃冠状動脈の局所的内圧上昇が原因ではないかと推定している.内外の文献を検索した限りこのような症候群はみられないので,胃切除術後の非常に稀な合併症として報告する.
索引用語
portosystemic shunt, hyperammonemia, postgastrectomy complication
日消外会誌 29: 1782-1786, 1996
別刷請求先
板東 隆文 〒150 渋谷区広尾4-1-22 日赤医療センター消化器外科
受理年月日
1996年2月14日
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