肝内門脈瘤を介した門脈肝静脈短絡症に対し門脈枝結紮術が奏効した1症例

田中　礼一郎, 鎌迫　陽, 川本　俊輔, 三鬼　慶太, 俣野　一郎, 村上　穆, 山口　高史^1）, 佐藤　匡美^2）

国立水戸病院外科, 同消化器内科^1）, 高須病院外科^2）

　肝内門脈瘤を介する門脈肝静脈短絡症の報告は画像診断の進歩により，最近増加しつつあるがきわめてまれな疾患である．今回，本症に対し問脈枝結然術が奏効した1例を報告する．症例は71歳の男性．早期胃癌（IIa，sm，tub₂，n₀）で術前精査中，CT，MRIにて肝左葉S₃に3×3×4 cmの門脈瘤を伴う門脈肝静脈短絡を発見された．プロトロンビン時間100％．総ビリルビン1，2 mg/dlとほぼ正常．HCV陽性．白血球数3,100/mm³，血小板数11×10⁴/mm³．腹水，食道静脈瘤は無いが脾腫を認めた．血中アンモニア130 µg/dl，ICG 15 47％．脳波には異常を認めなかったが，失調性歩行，断綴性言語を認め，神経症状を除けばChild Aの肝硬変を合併していた．1994年11月29日手術施行．門脈枝P₃を結紫した後，左胃動脈噴門枝を温存して胃切除，脾摘を行った．結紫前後の問脈圧は16.5→16.4 cm H₂Oと不変．術後血中アンモニアは31µg/dl，ICG 15は26％と低下し神経症状も著明に改善した．現在まで食道静脈瘤は出現していない，

索引用語
portosystemic encephalopathy, a portal hepatic venous shunt via an intrahepatic portal vein aneurysm, ligation of the left branch of portal vein

別刷請求先
田中礼一郎　〒271　松戸市上本郷4005　松戸市立病院救急部

受理年月日
1996年3月6日

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