症例報告
胃癌に併存した腹膜偽粘液腫を伴う虫垂原発粘液嚢胞腺癌の1例
工藤 俊, 川村 博司, 鈴木 祐子, 松嵜 正實, 仁科 盛之, 亀山 仁一*, 塚本 長*
三友堂病院外科, 山形大学第1外科*
胃癌に併存した腹膜偽粘液腫を伴う虫垂原発粘液嚢胞腺癌の1例を報告する.症例は61歳の女性.1995年1月11日,腹部膨満感のため来院した.入院,精査にて早期胃癌と原因不明の腹水を認めた.1月25日,手術施行.開腹時,約500 gのゼラチン様物質の貯留と破綻した虫垂粘液嚢腫を認めた.原因不明の腹水は虫垂粘液嚢腫原発の腹膜偽粘液腫と判断した.胃癌に対しては胃亜全摘,虫垂粘液嚢腫に対しては悪性の可能性あり回盲部を切除(D2)した後,粘液の徹底的除去と約10,000 mlの生理的食塩水による腹腔内洗浄を施行した.病理検索の結果,胃癌と虫垂粘液嚢胞腺癌の同時性重複癌と診断された.術後約1年経過した現在再発なく経過中である.虫垂粘液嚢胞腺癌が胃癌に併存して認める例は非常に少なく,特に腹膜偽粘液腫を伴う症例は,本邦では他に報告がみられなかった.
索引用語
mucinous cystoadenocarcinoma of appendix, pesudomyxoma, synchronous gastric cancer
日消外会誌 29: 1820-1824, 1996
別刷請求先
工藤 俊 〒992 米沢市中央6-1-219 三友堂病院外科
受理年月日
1996年3月6日
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