症例報告
巨大な後腹膜神経線維腫を合併した小児von Recklinghausen病の1例
末原 伸泰, 青木 康明, 伊藤 隆康, 永井 英司, 岸川 英樹
北九州市立若松病院外科
von Recklinghausen病(以下,R病)の小児に,後腹膜および馬尾神経から多発性に発生した巨大な腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は9歳の男児.生下時よリカフェオーレ斑および頸部・躯幹に多発性の皮下腫瘤を認めていた.脱肛と肛門刺激症状のため受診.下腹部に巨大な腫瘤を触知し,経直腸的針生検にて神経線維腫と診断された.CT,MRIの所見では骨盤から膵臓に至る後腹膜に巨大な腫瘍が認められ,仙骨管腔を通じて馬尾神経腫瘍と連なっていた.手術はまず,仙骨部の両側にわたる馬尾神経腫瘍を切除した後,2期的に開腹術を施行した.腫瘍は骨盤内から後腹膜を広範に占拠し,さらに神経に沿ってS状結腸や直腸,膀胱壁にびまん性に広がっていた.手術は両親の希望により下部直腸と膀胱は残し,腫瘍をS状結腸とともに可及的に切除した.小児R病の患者で,後腹膜に巨大腫瘍を形成することは極めてまれで,類似症例は文献上2例しか見いだせなかった.
索引用語
von Recklinghausen's disease, retroperitoneal neurofibroma, spinal tumor
日消外会誌 29: 1830-1834, 1996
別刷請求先
末原 伸泰 〒812-82 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学医学部第1外科教室
受理年月日
1996年3月6日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|