膵癌の拡大手術

石川　治

大阪府立成人病センター外科

　膵癌は後腹膜腔結合組織内の神経叢やリンパ管などに微小浸潤する傾向が強く，標準（1群リンパ節）郭清による膵癌切除後の局所再発率の高頻度な原因は，これらの微小病変を根絶しえなかったためと推察される．そこで我々は膵癌切除時には1，2群リンパ節だけでなく周囲結合織をも徹底郭清してきた．その結果，局所再発を有意に減少させ遠隔成績を向上させてきた（5年生存率27％）．これまで従来の標準郭清では治癒不能と考えられてきたリンパ節転移・門脈浸潤陽性例に対しても長期生存が期待できるようになってきた．しかし腫瘍径が4 cm以上のもの，2群リンパ節転移例，門脈浸潤高度例や動脈浸潤陽性例に対しては長期生存を期待し難いばかりか，術後のquality of lire（QOL）は不良であった．本稿では我々の行ってきた拡大郭清手術の手技の要点を紹介し，術後管理・QOL・遠隔成績に基づいて本手術適応の重要性とさらに併用治療の必要性を強調したい．

索引用語
pancreatic cancer, extended pancreatectomy, locoregional recurrence

別刷請求先
石川　治　〒537　大阪市東成区中道1-3-3　大阪府立成人病センター外科

受理年月日
1996年6月12日

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