卒後教育セミナー
膵癌の集学的治療
岡 正朗
山口大学第2外科
膵癌の予後は極めて不良であり,新たな治療が必要であり,拡大膵切除後の著しい栄養低下は息者のquality of life(QOL)は低下させる.以上の対策としては新たな集学的治療について検討した.上腸間膜動脈周囲の郭清については,左半周の神経叢を温存し,同部を中心に術中照射を行ったところ,予後を損なうことなく,排便回数の減少や栄養状態の改善を認めた.また,切除不能膵癌13例にlymphokine-activated killer細胞またはcytotoxic T-lymphocyte(CTL)を用いた養子免疫療法を施行したところ,CTL療法にてPR 3例を認めた.新たな養子免疫療法として,HLA非拘束性と報告されている,ムチンコア蛋白MUC1を認識するCTL(MUC1-CTL)を誘導し,臨床応用した.高度進行膵癌1例で,腫瘍増殖と肝転移の抑制,腫瘍マーカーの増加の抑制が観察された.HLA非拘束性MUC1特異的CTL養子免疫療法は,膵癌術後再発防止の新たな治療法として期待される.
索引用語
pancreatic cancer, multidisciplinary therapy, adoptive immunotherapy
日消外会誌 29: 1851-1855, 1996
別刷請求先
岡 正朗 〒755 宇部市小串1144 山口大学医学部第2外科
受理年月日
1996年6月12日
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