会長講演
大腸癌手術の変容と将来展望
安富 正幸
近畿大学医学部第1外科
約35年間に経験した大腸癌治療の変遷をのべた.1961年以前の直腸癌手術は直腸切断術のみであったが,その後の標準手術はpull-through(陣内)から前方切除術と変容した.器械による超低位吻合の機能改善に結腸J-pouchが有用である.拡大郭清と臓器の機能温存は相反する.そこで術後機能評価とclearing法によるリンパ節の検索と生存率から拡大郭清は下部直腸と肛門管のT3とT4の癌に限るべきである.また骨盤リンパ節転移例は郭清によっても26%の5生率にすぎないので癌の局所制御のために補助療法が必要なことが示された.神経温存のうち全温存によって排尿と勃起機能はよく保たれるが,射精機能は不十分であった.部分温存では排尿は良好であったが性機能は不良であった.肝転移は患者の予後を決定する最大の因子である.肝臓が骨髄外造血臓器であることに着目し,切除不能肝転移に対しIL-2,MMC,5-FUの肝動注を行い,76%の奏効率と28%の5生率を得た.
索引用語
advancement of colorectal cancer treatment, pelvic node dissection, sphincter saving operation, autonomic nerves preseryation, treatment for liver metastasis
日消外会誌 29: 1857-1867, 1996
別刷請求先
安富 正幸 〒589 大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部第1外科
受理年月日
1996年6月12日
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