原著
胃切除後大球性貧血症例におけるvitamin B12結合蛋白測定の意義
野村 勝俊, 野口 芳一, 大島 貴, 吉川 貴己, 福沢 邦康, 牧野 達郎, 円谷 彰, 松本 昭彦
横浜市立大学第1外科
胃切除後,vitamin B12(以下,Vit. B12)や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血の出現は広く知られているが,両者とも正常でありながら大球性貧血を呈する症例も少なくない.これらVit. B12,葉酸欠乏だけでは説明し得ない大球性貧血の原因の一部を明らかにするために,胃切除後におけるVit. B12結合蛋白の変化につき検討した.対象の胃切除症例151例中105例に貧血が認められ,うち35例は大球性貧血を呈した.大球性貧血症例中結合蛋白量を測定し得た15例において結合蛋白総量はコントロールに比し増加しており,この傾向は血中B12濃度の正常な症例においても認められた.またVit. B12を組織中に移行させ得る唯一の蛋白であるtranscobalamin II(以下,Tc II)は胃切除群において変化を認めなかったが,Vit. B12と結合しているholo-Tc Hは減少する傾向にあった.これらの結果から胃切除後に血中濃度には反映されなくとも,体内のVit. B12欠乏が進行している可能性が考えられた.
索引用語
post-gastrectomy, anemia, transcobalamin II
日消外会誌 29: 1868-1872, 1996
別刷請求先
野村 勝俊 〒236 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部第1外科
受理年月日
1996年5月8日
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