原著
消化器癌患者における術前貯血式自己血輸血―遺伝子組換え型ヒトエリスロポエチンの有用性―
加藤 正久, 脇本 信博1), 安達 実樹, 横畠 徳行, 福島 亮治, 安齋 光昭, 栄 和子2), 杉山 美雪2), 冲永 功太
帝京大学第2外科, 同 整形外科1), 同 輸血部2)
消化器癌患者19例に対し,術前貯血式血己血輸血を行った.対象患者は,胃癌全摘7例,直腸癌8例,食道癌4例で,初期Hb値が13.0 g/dl未満の患者(I群)ではr-HuEPO(KRN5702)24,000単位を週1回皮下投与のうえ800 mlの貯血を行い,13.0 g/dl以上(II群)ではr-HuEPOを併用せずに貯血を行った.II群では貯血に伴いヘモグロビン値は有意に低下したが,I群では低下を認めず,貯血量は両群に差はなかった.また,同種血輪血併用例はII群の1例のみであった.網状赤血球数,血漿エリスロポエチン濃度,貧血回復率はI群が有意に高値であった.貯血に伴う鉄代謝の変化では,癌患者における鉄の利用障害が示唆された.また,貯血によって血清蛋白および凝固能の軽度低下が認められたが,貯血およびr-HuEPO投与による重篤な合併症は認められなかった.消化器癌患者における自己血輸血は安全に施行でき,軽度貧血例においてはr-HuEPOの併用が有効であると考えられた.
索引用語
autologous blood transfusion, recombinant human erythropoietin, gastrointestinal cancer surgery
日消外会誌 29: 1891-1899, 1996
別刷請求先
加藤 正久 〒173 板橋区加賀2-11-1 帝京大学第2外科
受理年月日
1996年5月8日
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