症例報告
胆管内発育型を呈する肝内胆管癌の1例
松本 敏文, 古田 斗志也, 原口 勝, 勝田 猛, 江口 哲, 森井 雄治, 竹内 裕昭, 穴井 秀明
国立大分病院外科
肝内胆管癌の診断にて手術を施行したが,腫瘤を形成せずに胆管内のみに発育増強した1例を経験したので報告した.症例は62歳の女性で心窩部痛を主訴に近医を受診し,肝内胆管癌の診断を得て手術を目的に当院を紹介された.腹部超音波検査およびCT検査にて肝右葉に径約4 cmの腫瘤を認め内部に肝内胆管の拡張を認めた.術中超音波検査を用い腫瘍を確認し肝右葉切除術を施行したが,腫瘤形成はなく肝内胆管の拡張とその内腔に多数の腫瘍栓を認めるのみであった.組織学的には胆管壁および腫瘍栓とも高分化型腺癌であった.腫瘤を形成せず肝内胆管の内腔のみに発育する肉眼形態像は,現在,分類上一定の見解がない.また術前に胆管内発育型の肝内胆管癌を診断することは難しく,さらには進展範囲の確認が困難で切除範囲の決定に際しても慎重を有すると考えられた.
索引用語
intrahepatic cholangiocarcinoma, intraductal growth
日消外会誌 29: 1911-1915, 1996
別刷請求先
松本 敏文 〒870-01 大分市横田1000-1 国立大分病院外科
受理年月日
1996年5月8日
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