特集
消化器進行癌患者におけるインフォームド・コンセント―事実を説明する医療の実際―
笹子 三津留
国立がんセンター中央病院外科
予後のきわめて不良な進行癌患者に対するインフォームド・コンセントのあり方を評価する目的で,68例(のべ71症例)について検討した.段階的な情報伝達ときめの細かい経過観察により予後をも含めて,ほぼ全面的な情報開示が行えた.術後に,予後に直結する手術所見を伝えた時期は,1週間以降2週間以内が最も多く,90%以上で入院中に情報を伝えた.予後不良例の後治療の選択では,必ず無治療という選択肢を提示した.その結果,24人が無治療を選択した.抗癌治療の有無は直接予後に関係せず,6か月以内死亡の16例中無治療は3例であった.68例中精神科医の介入を必要としたのは11名(15%)であった.予後不良の進行癌においては,抗癌治療の意味は絶対ではなく,無治療を含めた患者自身の選択が重要である.段階的な,かつ時間をかけた情報伝達と伝達後の心配りが必須ではあるが,進行癌患者でも本来のインフォームド・コンセントの実施は可能と思われた.
索引用語
informed consent in adavanced cancer patients, cancer of digestivi organs, telling the truth
日消外会誌 29: 1997-2000, 1996
別刷請求先
笹子三津留 〒104 東京都中央区築地5-1-1 国立がんセンター中央病院外科
受理年月日
1996年6月12日
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