原著
幽門保存胃切除術と胃十二指腸運動に関する実験的検討
倉澤 恒雄
順天堂大学医学部外科学教室第1外科学講座(主任:榊原 宣教授)
幽門保存胃切除術(pylorus preserving gastrectomy:以下,PPGと略記)における迷走神経幽門枝温存の意義を明らかにする目的で,同一犬で無処置群,ついで迷走神経幽門枝温存PPG群(PPG群),そして幹迷走神経切離術付加PPG群(PPG-TV群)を作成し,各群についてtransducer法とコンピューター解析を用いた消化管運動測定および胃排出能測定を行い比較検討した.まず,空腹期では消化管運動に有意な変化はみられなかったが,食後期ではPPG-TV群の幽門輪における運動量はPPG群に比し有意(p<0.05)に低下した.またPPG-TV群の空腹期強収縮波群再出現時間は358分と,無処置群の298分,PPG群の319分に比し有意(p<0.05)に延長し,acetaminophen法による胃排出能測定でも,PPG-TV群は他の2群に比し有意(p<0.05)に遅延した.以上よりPPGにおける迷走神経幽門枝の切離は,消化管運動の低下と胃排出の遅延をもたらすと考えられ,その温存の意義が示唆された.
索引用語
pylorus preserving gastrectomy, gastroduodenal motility, gastric emptying
日消外会誌 29: 2075-2082, 1996
別刷請求先
倉澤 恒雄 〒113 文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部第1外科
受理年月日
1996年7月10日
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