症例報告
術後早期に巨大腹壁腫瘤として再発した肉腫様肝癌の1切除例
森田 康, 金丸 太一, 太田 恭介, 山本 正博, 斎藤 洋一, 林 祥剛*, 伊東 宏*
神戸大学第1外科, 同 第1病理*
肉腫様肝癌は比較的まれな疾患である.本腫瘍の特徴は増殖速度が速く,早期より血行性またはリンパ行性に転移をきたすことで,現在までに切除例の報告はない.今回,我々は肝切除後約2か月で巨大腹壁腫瘤として再発した肉腫様肝癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は65歳の男性で,上腹部痛を主訴に来院し,画像診断にて肝左葉外側上区域に径4 cmの腫瘍を認め,術前低分化型肝細胞癌の診断にて肝部分切除を施行した.病理組織学的所見で腫瘍細胞は紡鍾形で充実性に増殖しており,肉腫様肝癌と診断した.術後1か月目よリドレーン挿入部より出血を認め,同部に鵞卵大の腫瘤を認めた.さらに術後2か月目には腹壁外へ発育する小児頭大の巨大腹壁腫瘤となり術後141日目に死亡した.本症例のdoubling timeは11.9日と短く,肉腫様肝癌は悪性度の高い腫瘍であり,可能な限り広範な肝切除が必要であると考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, sarcomatous change
日消外会誌 29: 2141-2145, 1996
別刷請求先
森田 康 〒650 神戸市中央区楠町7丁目5番1号 神戸大医学部第1外科
受理年月日
1996年6月12日
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