原著
食道癌切除症例に対する自己血輸血の有用性
木ノ下 義宏, 鶴丸 昌彦, 宇田川 晴司, 梶山 美明, 堤 謙二, 上野 正紀, 土肥 健彦, 早川 健, 松田 正道, 橋本 雅司, 沢田 壽仁, 渡邊 五朗, 秋山 洋, 高橋 孝喜*
虎の門病院消化器外, 同 輸血部*
1994年5月より食道癌切除例に対して自己血輸血を導入した.適応基準は日本輸血学会のガイドラインを参考とした.1995年1月より12月までの食道切除97例で,術前未治療の切除例38例に800 mlの術前自己血採血が可能であった(以下,自己血群).自己血輸血を行う以前の1992年1月から1994年4月までの同一術式の症例で,自己血輸血の採血基準を満たす50例を対照群とし,両群を比較検討した.ヘモグロビン(Hb)濃度の推移は,対照群と比較して自己血群は,術後有意に安定したレベルであった.自己血群は2例(濃厚赤血球6単位)の同種血輸血を必要としたのに対し,対照群は16例(全血2単位,濃厚赤血球54単位)の同種血輸血が必要となり,2群間で同種血輸血回避率に有意差を認めた(p=0.002).食道癌切除に対する800 ml採血の自己血輸血は,術後Hb濃度を安定したレベルに保ち,同種血輸血を回避する上で有効であると考えられた.
索引用語
autologous blood transfusion, esophageal carcinoma, recombinant human erythropoietin
日消外会誌 29: 2227-2232, 1996
別刷請求先
木ノ下義宏 〒105 港区虎ノ門2-2-2 虎ノ門病院消化器外科
受理年月日
1996年7月10日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|