原著
肝虚血再灌流時の好中球elastaseの変動と阻害剤投与の意義について
岡崎 俊哉
順天堂大学医学部外科学教室第1外科学講座(主任:榊原 宣教授)
ラット肝虚血再灌流モデルを用いて虚血再灌流障害における好中球elastaseの影響,およびelastase阻害剤の経門脈的投与の効果について検討した.虚血120分後,elastase阻害剤を経門脈に投与し,30分間再灌流した投与群は,非投与群に比べ7日間生存率において上昇がみられた.投与群の肝組織血流量の低下は抑制され,また電顕的観察でも肝微小循環系の破壊は軽度であった.肝上部下大静脈血中の好中球elastase活性値,血清TNF濃度も投与群は非投与群に比べ低値を示した.また,肝viabilityの指標であるketone体比も投与群は非投与群に比較し改善された.以上の結果より,肝虚血再灌流障害には好中球elastaseの関与が考えられ,elastase阻害剤の投与は,その障害を軽減できる可能性が示唆された.
索引用語
ischemic-reperfusion injury, blood flow of the liver, neutrophil elastase, blood ketone body ratio
日消外会誌 29: 2258-2264, 1996
別刷請求先
岡崎 俊哉 〒113 文京区本郷2-1-1 順天堂大学第1外科学教室213研究室
受理年月日
1996年7月10日
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