原著
脈管浸潤巣Sialyl Lewis Xの大腸癌肝転移および残肝再発における意義
田中 邦哉
横浜市立大学医学部外科学第2講座(主任:嶋田 紘教授)
大腸癌肝転移および肝転移切除後残肝再発の予測因子を探る目的で,大腸癌原発巣(78例)における脈管浸潤巣のSialyl Lewis X(SLex)発現と肝転移の相関と,切除した大腸癌肝転移巣(22例)における脈管浸潤巣のSLex発現と残肝再発の相関を検討した.原発巣の脈管浸潤巣でSLex発現陽性であった16例の累積肝転移率は陰性32例に比較し高率であり(p<0.01),3年累積肝転移率はそれぞれ50.0%,35.0%であった.肝転移切除例のうち,原発巣周囲の脈管浸潤巣でSLex発現陽性であった10例の累積残肝再発率は,陰性4例と差はなかった.一方,肝転移巣周囲の脈管浸潤巣でSLex発現陽性であった9例の累積残肝再発率は,陰性4例に比較し高率であった(p<0.05).以上より,原発巣周囲における脈管浸潤巣のSLex発現は肝転移,肝転移巣周囲における脈管浸潤巣のSLex発現は,残肝再発の重要な予測因子のひとつになると考えられた.
索引用語
liver metastasis of colorectal cancer, residual liver recurrence, Sialyl Lewis X, vascular permeation
日消外会誌 29: 2271-2278, 1996
別刷請求先
田中 邦哉 〒236 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部第2外科
受理年月日
1996年9月11日
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