症例報告
インスリノーマ切除後7年目に残膵に発生した多発インスリノーマの1例
畑中 正行, 今泉 俊秀, 羽鳥 隆, 中迫 利明, 原田 信比古, 秋山 和宏, 片桐 聡, 羽生 富士夫, 高崎 健
東京女子医科大学消化器外科
症例は45歳の女性.1987年に低血糖症状を認め,他医にてインスリノーマの診断で膵体尾部切除術が施行された.その後,経過良好であったが,1994年8月頃より再び低血糖症状を認めるようになりUS,CT,血管造影で,残膵の膵頭部(φ5 mm)と膵体部(φ15 mm)に計2個のhypervascularityを示す腫瘤を認めた.PTPS法で同部のIRI値のstep upを認めたため,残膵に発生した多発インスリノーマと診断し,術前診断しえなかった膵頭部の小腫瘤(φ3 mm)も含め,計3個の腫瘍を摘出した.術中US,術中Quick IRI法にて腫瘍の完全摘出を確認した.12か月経過した現在,低血糖症状の再発はみられていない.本例は,インスリノーマ切除後7年間の長期間経過した後に残膵に発生した異時性多発インスリノーマに対し,再切除しえた症例であり,きわめてまれであると思われた.
索引用語
multiple insulinomas, percutaneus trans hepatic portal vein sumpling, intra-operative Quick IRI monitoring
日消外会誌 29: 2299-2303, 1996
別刷請求先
畑中 正行 〒103 新宿区河田町8-1 東京女子医科大学付属消化器病センター外科
受理年月日
1996年7月10日
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