予防的下大静脈フィルターを用いた肺塞栓症併存結腸癌の1手術例

米山　哲司^＊, 清水　謙司, 米沢　圭, 東　久弥, 森　茂, 二村　学, 白子　隆志, 山口　哲哉, 北角　泰人, 横尾　直樹

綜合病院高山赤十字病院外科（^＊現・京都大学医学研究科消化器外科）

　肺塞栓症にて入院加療中に結腸癌を診断され，予防的下大静脈フィルターを用いて手術しえた症例を経験した．症例は78歳の女性で，呼吸困難にて来院，肺塞栓症の診断にて入院中，貧血を指摘され結腸癌が発見された．術前に抗凝固療法施行，かつ下大静脈フィルターを留置し，肺塞栓再発予防や肺機能の改善に努め，入院第37日目に根治手術を行った．術後も抗凝固療法を行い，肺塞栓症の再発もなく術後第18日目に退院した．以後2年経過したが，再発は認めていない．
　肺塞栓症合併患者の周術期管理上，肺塞栓症再発が問題となるが，周術期管理について詳細に論じた報告は見当たらない．そこでこの症例を踏まえ，肺塞栓症合併患者の周術期管理について考察した．抗凝固療法や下大静脈フィルター留置施行は再発を防止し，特に，下大静脈フィルターは周術期管理上有用であった．

索引用語
vena cava filter, pulmonary thromboembolism, perioperative management

別刷請求先
米山　哲司　〒606　京都市左京区聖護院川原町54　京都大学医学研究科消化器外科

受理年月日
1996年9月11日

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