卒後教育セミナー
消化器外科感染症における腸内細菌の重要性
炭山 嘉伸
東邦大学医学部外科学第3講座
臨床材料や腸管内から分離される細菌は,偏性嫌気性菌,通性嫌気性菌,偏性好気性菌の3つに大別される.腸管内は嫌気状態が保たれ,腸内細菌叢のほとんどは嫌気性菌である.そして,腸内細菌は相互間のバランスで病原菌の異常増殖を抑え,IgA抗体産生,マクロファージの遊走能の賦活,などの作用を持ち,感染防御機構の一端を担っている.しかし,腸内細菌は術後感染,日和見感染やbacterial translocationの原因となりうる.このように,腸内細菌は生体にとって,メリットとデメリットの両面を持っているといえる.一方,腸内細菌叢に変動を来す因子はさまざまであり,外科領域ではH2 receptor antagonists,胃切除,抗菌薬の投与,total parenteral nutrition(以下,TPN)などが重要である.消化器外科領域では術後感染予防の抗菌薬の投与は不可欠である.したがって,抗菌薬の使用に当たっては,そのメリットとデメリットを十分考慮する必要がある.
索引用語
intestinal flora, MRSA, postoperative infection
別刷請求先
炭山 嘉伸 〒153 目黒区大橋2-17-6 東邦大学医学部第3外科
受理年月日
1996年10月9日
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