卒後教育セミナー
抗菌薬の使い方の実際
相川 直樹
慶應義塾大学医学部救急部
消化器外科領域における感染症のコントロールには,無菌的手術操作,感染巣のドレナージに加え,適切な抗菌薬療法が重要である.急性胆嚢炎,急性虫垂炎,汎発性腹膜炎などの1次感染症では,その起炎菌を推定して,診断直後よりempiric chemotherapyを施行する.薬剤の選択は,起炎菌推定,抗菌特性からの選択,薬物動態からの選択,最適薬剤の決定の4ステップによる.わが国では,過剰な予防的化学療法が施行される傾向にあるが,手術の汚染度と宿主の感染防御能とのバランスを考慮し,薬剤選択と投与日数とを決定すべきである.術後感染症では,ドレナージとともに早期に抗菌薬療法を開始する.起炎菌が感受性の薬剤を3日以上使用しても改善しない場合は,複数菌感染症や多発性腹腔内膿瘍などドレナージを要する感染巣の残存を検討する.Methicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症にはvancomycinを第1選択薬とする.
索引用語
empiric chemotherapy, antimicrobial prophylaxis, surgical site infection
別刷請求先
相川 直樹 〒160 新宿区信濃町35 慶應義塾大学医学部救急部
受理年月日
1996年10月9日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|