原著
肝嚢胞性疾患49例の臨床病理学的検討
竹内 丙午, 鈴木 正徳, 福原 賢治, 海野 倫明, 遠藤 公人, 成島 陽一, 力山 敏樹, 坂本 宣英, 篠田 雅央, 松野 正紀
東北大学第1外科学教室
肝嚢胞性疾患の自験49例を対象に,画像診断能と嚢胞穿刺液および壁構成細胞の免疫組織化学的性状について検討した.画像所見からは肝嚢胞例で嚢胞の一部が結節状を呈したり,嚢胞腺癌においても平滑な嚢胞壁を有するものもあり,鑑別には限界があった.また嚢胞内容液のCEA・CA19-9は良・悪性をとわず高値を呈し,細胞診は偽陰性が多く,また腹膜播種などの危険性もあることから嚢胞穿刺液検査は診断の面において有用ではない.免疫組織化学的検索からは肝嚢胞壁の上皮細胞はCA19-9,CEAともに陽性であり,免疫電顕を用いた観察でもCEAは嚢胞壁上皮に極性を失って発現していた.CEAの発現は構成壁細胞のmalignant potentialを反映している可能性があり,画像診断で良性肝嚢胞,肝嚢胞腺腫と考えられる症例でも,切除標本において免疫組織化学的検索を行うことは予後の指標になるものと考えられた.
索引用語
liver cyst, cystadenoma of the liver, cystadenocarcinoma of the liver, carcinoembryonic antigen, immunohistochemistry
別刷請求先
竹内 丙午 〒980-77 仙台市青葉区星陵町1-1 東北大学第1外科
受理年月日
1996年10月9日
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