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第30巻 第4号 1997年4月 [目次] [全文 ( PDF 503KB)]
症例報告

成人右側 Bochdalek孔ヘルニアを伴った十二指腸潰瘍穿孔の1症例

井戸田 望, 初瀬 一夫, 渡邊 覚文, 大渕 康弘, 青木 秀樹, 柿原 稔, 市倉 隆, 望月 英隆

防衛医科大学校第1外科

 右側Bochdalek孔ヘルニア合併のため特異な臨床病態を呈した成人の十二指腸潰瘍穿孔例を経験したので報告する.症例は68歳の女性,突然の腹部疝痛にて入院.胸部X線で右側気胸,右横隔膜挙上,左横隔膜下遊離ガス像を認め穿孔性腹膜炎の診断で緊急開腹術を施行した.十二指腸球部前壁の潰瘍穿孔による腹膜炎で大網充填術を施行した.また右横隔膜外側後方にヘルニアを認めBochdalek孔ヘルニアの診断を得た.ヘルニア門は8×5 cm,嚢は認めなかった.脱出臓器は回腸末端40 cmから右側横行結腸に至る小腸,結腸で,用手的に還納後,横隔膜欠損孔を2層に結節縫合した.Bochdalek孔ヘルニアは新生時期に重篤な呼吸循環障害をきたして発見され,新生児・小児期をほとんど無症状で過ごし成人になり発見される例はまれであり,またその多くは左側に発生する.成人右側のBochdalek孔ヘルニアは自験例を含め本邦報告110例中5例にしかすぎず,非常にまれと考えられた.

索引用語
Bochdalek hernia, adult Bochdalek hernia, panperitonitis

日消外会誌 30: 858-862, 1997

別刷請求先
井戸田 望 〒359 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第1外科

受理年月日
1996年11月13日

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