特集
MRSA法による変異遺伝子の検出とその臨床応用
林 尚子, 江上 寛, 高野 定, 小川 道雄, 中森 正二1), 今岡 真義1), 中村 祐輔2)
熊本大学第2外科, 大阪成人病センター外科1), 東京大学医科学研究所分子病態施設2)
Mutant-allele-specific amplification(MASA)法により,約1万個の正常細胞中に含まれる遺伝子変異をもつ1個の腫瘍細胞を簡便に検出することができる.組織学的にリンパ節転移陰性と診断された大腸癌手術症例120例について,リンパ節に原発巣と同じ遺伝子変異が存在するか否かMASA法を用いて検討した.原発巣にK-rasあるいはp53遺伝子の変異を認めたのは71例であり,遺伝子診断でリンパ節転移陽性とされた37例中27例は術後5年以内に再発し,転移陰性とされた34例は全例において再発はみられず,遺伝子診断によるリンパ節転移と予後には高い相関が認められた.また,膵癌の早期診断を目的とし本法を用い,膵液中の変異K-ras遺伝子の検出を行ったところ,膵癌の80%(5例中4例)に膵液中から変異を検出できた.本法を臨床応用することで,正確な予後判定や癌の早期診断が可能になるものと思われる.
索引用語
mutant-allele-amplification (MASA) method, lymph node metastasis of colorectal cancer, K-ras gene mutations in pancreatic juice
別刷請求先
小川 道雄 〒860 態本市本荘1-1-1 態本大学医学部第2外科
受理年月日
1996年12月11日
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