特集
膵癌・大腸癌におけるras蛋白に対する免疫応答による存在診断とその治療への展望
高橋 正純, 山岡 博之, 市川 靖史, 渡会 伸治, 嶋田 紘, Martin A, Cheever1)
横浜市立大学医学部第2外科, ワシントン大学医学部1)
膵癌・大腸癌患者においてras蛋白に対する免疫応答を検討した.血清中の抗ras抗体陽性率は正常人の5%(2/40)に対し,大腸癌で40%(51/150,p<0.01),膵癌で80%(4/5,p<0.05)と高かつた.抗ras抗体の認識部位はras蛋白の正常部,変異部など多様でその73%はras蛋白のカルボキシル基側の正常部であった.末梢血中のras蛋白関連ペプチドに対する特異的T細胞の検出率は正常人の0%(0/20)に対し,大腸癌で24%(6/25),膵癌で40%(6/15)と高かった(p<0.01).Ras蛋白を標的とした細胞障害性T細胞(CTL)の誘導を試み,膵癌3例中1例ではras蛋白のカルボキシル基側の正常部ペプチドに特異的なCD4陽性のCTL株が得られた.以上より,膵癌,大腸癌でras蛋白に対する特異的な血清抗体による癌の存在診断の可能性およびras蛋白に対する特異的CTLによる癌治療の展望が期待された.
索引用語
ras oncogene, tumor specific antigen, pancreas cancer
別刷請求先
高橋 正純 〒236 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部第2外科
受理年月日
1996年12月11日
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