原著
予後因子より見た大腸癌肝転移切除術式の方針と術後肝動注療法の意義
清水 周次, 千々岩 一男, 山口 幸二, 水元 一博, 飛松 正則*, 田中 雅夫
九州大学医学部第1外科, 福岡赤十字病院外科*
大腸癌肝転移切除例47例につき各種予後因子を統計学的に検討し,手術適応および術式についての方針と術後肝動注の意義について考察した.無再発生存率に対しては肝切除断端の癌遺残の有無(p<0.05)が,累積生存率に対しては腫瘍最大径(p<0.01)と肝切除術根治度(p<0.05)が有意な予後因子であった.同時性,術前血中CEA値,肝転移の範囲,転移個数,肝切除術式,輸血または術後肝動注は有意な予後規定因子ではなかった.しかし,腫瘍最大径3 cm以上の症例に対しては,術後肝動注は無再発および累積生存率を有意に延長した(p<0.05).以上の結果より,大腸癌肝転移に対する外科治療はその個数や範囲に関わらず,術式に関係なく腫瘍組織を残さないように切除することが重要であり,多発例においても積極的に切除する.さらに径3 cm以上の肝転移切除後は肝動注を積極的に追加すべきと考えられた.
索引用語
liver metastasis from colorectal cancer, prognostic factor, hepatectomy, hepatic arterial infusion chemotherapy
別刷請求先
清水 周次 〒812-82 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学医学部第1外科
受理年月日
1997年1月8日
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