症例報告
肝鎌状間膜裂隙よる内ヘルニア嵌頓の1例
出口 浩之, 服部 道男, 五島 正裕*, 山下 修一
明舞中央病院外科, 神戸大学医学部第1外科*
症例は34歳の女性で,急激に発症した激しい上腹部痛と頻回の嘔吐のため,救急車で搬送され,腸閉塞症の診断で入院した.腹部X線写真では上腹部に腸管の液面形成像とCT scanでは肝左葉外側区の腹側に拡張した小腸陰影を認めた.これらの結果,絞扼性イレウスの診断のもとに,緊急開腹術を施行した.
手術診断は肝鎌状間膜裂隙の異常裂孔に小腸が陥入した内ヘルニア嵌頓であった.手術はこの異常裂孔を開大して陥入腸管を整復し,血行障害に陥っていた小腸切除・吻合ならびにこの裂孔を修復した.術後経過は良好で,第20病日に軽快退院した.
本症例のような肝鎌状間膜裂隙による内ヘルニア嵌頓症例は検索しえた1937年以降の全世界の文献上わずか8例の報告にとどまり,本邦では第4例目であると思われ,文献的考察を加えて報告した.
索引用語
internal hernia, small bowel obstruction, defect in the falciform ligament
日消外会誌 30: 1009-1012, 1997
別刷請求先
出口 浩之 〒673 明石市松が丘4-1-32 明舞中央病院外科
受理年月日
1996年12月11日
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