臨床経験
術後肺塞栓症の予防法としてのintermittent sequential pneumatic compressionの使用経験
味村 俊樹, 山口 浩和, 清水 伸幸, 金田 篤志, 安田 秀光, 酒井 滋, 倉本 秋, 上西 紀夫, 山川 満, 大原 毅
東京大学第3外科
肺塞栓症(以下,PE)は,まれではあるが致死率が高いため,欧米では重大な術後合併症と認識され,予防法としてヘパリン投与や波動型末梢循環促進装置(intermittent sequential pneumatic compression:以下,ISPC)が採用されている.ISPCとは術中に下肢を機械的にマッサージし,深部静脈血栓症(以下,DVT)およびPEを防止する装置である.今回我々はPEの予防法としてISPCを使用したので,その使用経験を報告する.1995年10月~1996年9月の1年間で,当教室における全身麻酔下待期的開腹手術182例のうち,肥満や長時間の手術などのDVTやPEに対するhigh risk群56例にISPCを使用した.使用群56例と非使用群126例の間で,DVTおよびPEの発生率を比較検討したところ,ISPC非使用群でDVTが1例,PEが2例発生したのに対して,ISPC使用群ではDVTが1例発生した.ISPCによる副作用は認めなかった.有意差はないが,ISPCは安全で簡便にPEを予防しうる装置と考える.
索引用語
postoperative pulmonary embolism, prophylaxis, intermittent sequential pneumatic compression
日消外会誌 30: 1023-1027, 1997
別刷請求先
味村 俊樹 〒112 東京都文京区目白台3-28-6 東京大学第3外科
受理年月日
1997年1月8日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|