原著
肝静脈合併肝切除における術前肝静脈血流遮断の有用性についての実験的検討
杉本 武巳, 具 英成, 斎藤 洋一
神戸大学第1外科
肝静脈合併肝切除における肝静脈再建を回避する方法として術前肝静脈血流遮断(HVO)の有用性について実験的に検討した.ビーグル犬で開腹下に左,中肝静脈の中枢側を結紮により約15 mm閉塞させHVOモデルを作成した.実験群(各7例)はI群;HVO直後犠死群,II群;HVO 2週後犠死群に分け犠死後逆行性肝静脈造影を行った.I群では左,中肝静脈のドレナージ領域は造影されなかったのに対しII群では副血行路を介し閉塞部位より末梢側が全例で明瞭に造影された.門脈圧はHVO直後に上昇したが40分後には前値に復した.II群の犠死時肝肉眼所見はHVO前と比較して変化なく病理組織学的にうっ血はなかった.HVO後GOTが一過性に上昇したが血清ビリルビンは正常範囲であった.以上より肝静脈合併肝切除を要する肝癌例では術前HVOにより肝静脈再建なしに肝切除が施行できる可能性が示唆された.
索引用語
hepatic venous occlusion, malignant liver tumor, hepatectomy, hepatic vein resection
日消外会誌 30: 1714-1719, 1997
別刷請求先
具 英成 〒650 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学第1外科
受理年月日
1997年2月12日
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