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第30巻 第7号 1997年7月 [目次] [全文 ( PDF 461KB)]
症例報告

絨毛癌の十二指腸転移の1例

篠田 昌宏, 竹中 能文, 山本 貴章, 森 俊雄

佐野厚生総合病院外科

 症例は30歳の女性で,タール便を主訴に来院した.入院時血液検査所見では血中HCGβ140 ng/ml,尿中HCG 1,340 IU/lと高値を示した.十二指腸下行脚に出血を伴う巨大な潰瘍性病変,肝に不整形の多発性腫瘤,右胸部に緊張性気胸を認めた.十二指腸,肝病変部よりの生検はいずれも絨毛癌であった.出血コントロールのため胃空腸吻合術を施行したが,全身状態の改善を認めず,術後50日目に癌死した.病理所見上,他の組織型を伴わない絨毛癌であり,両肺,肝臓,胃,膵臓,右卵巣に転移を認めたが,子宮内には病変を認めなかった.自験例は約1年前に女児1人を自然分娩しており,子宮内膜,胎盤などを原発とした妊娠性絨毛癌の転移と診断した.十二指腸に発生した絨毛癌の報告はこれまで8例あるが,妊娠性絨毛癌の十二指腸転移の報告は,我々が検索しえた限りでは自験例が最初である.

索引用語
choriocarcinoma, metastasis of choriocarcinoma to duodenum, tarry stool

日消外会誌 30: 1766-1770, 1997

別刷請求先
篠田 昌宏 〒160 東京都新宿区信濃町35 慶應義塾大学病院外科

受理年月日
1997年2月12日

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