症例報告
直腸悪性神経鞘腫の1例
吉田 寛1), 江上 格1), 和田 雅世1), 前田 昭太郎2), 田中 宣威3), 恩田 昌彦1)
日本医科大学付属多摩永山病院外科1), 同 病理部2), 日本医科大学付属病院第1外科3)
3年4か月の経過観察の後,手術を施行した巨大直腸悪性神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は61歳の女性で,1990年6月,肛門部痛を主訴に受診し,直腸に直径約4 cmの粘膜下腫瘍を認めた.治療を勧めたが,疼痛出現時のみ来院し,疼痛が消失すると治療を拒否していた.1993年10月,肛門部痛・腫瘤,発熱,体重減少,歩行および坐位困難にて緊急入院となった.右臀部に15×10×10 cmの腫瘍が突出し,自潰により膿が流出していた.腫瘍マーカーは,IAP 736 µg/mlと高値を示した.腹会陰式直腸切断術を施行し,病理所見にて悪性神経鞘腫と診断した.術後経過良好にて退院し,現在,外来にて厳重な経過観察中である.経時的なCTによる腫瘍径の測定では,径の増大速度は,4 cmから5 cmに増大時は,14か月であったが,その後増大速度は速くなり,5 cmから10 cm(実測値15×10×10 cm)では26か月であった.
索引用語
malignant schwannoma, rectum
日消外会誌 30: 1809-1813, 1997
別刷請求先
吉田 寛 〒113 文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科
受理年月日
1997年2月12日
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