症例報告
Transjugular intrahepatic portoplastyにて治療しえた術後肝外門脈閉塞症の1例
中里 雄一, 稲垣 芳則, 水沼 仁孝*, 佐野 勝英, 横田 徳靖, 田中 和郎, 武内 孝介, 二川 康郎, 青木 照明
東京慈恵会医科大学外科, 同 放射線科*
下部胆管癌に対する膵頭十二指腸切除術後8年目に,肝前性門脈圧亢進症から消化管出血を繰り返す症例に対し,本邦初の経頸静脈的門脈形成術を施行し,門脈圧改善を認めたので報告する.症例は78歳の男性.主訴は下血.画像診断にて胆管癌再発所見はなく,腹部血管造影検査で,肝門部付近に門脈本幹の屈曲および捻れと,求肝性側副路の発達が認められた.これに対し,transjugular intrahepatic portosystemic shuntの手技を用いて,肝静脈―門脈ルートから門脈本幹をバルーン拡張し,同部に10 mm wallstent®を留置した.術後造影では,側副路は造影されず,門脈本幹を通じて肝内門脈のみが造影された.超音波ドップラー検査では,Vmaxが術前の3.2 m/secから1.7 m/secに低下し,門脈血流量は2.8 l/secから6.9 l/secに増量していた.合併症なく術後第11病日に退院し,以後1年8か月貧血および下血を認めていない.
索引用語
transjugular intrahepatic portoplasty, prehepatic portal vein obstruction, selfexpandable metalic stent
日消外会誌 30: 1932-1936, 1997
別刷請求先
中里 雄一 〒105 東京都港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科 (第2)
受理年月日
1997年3月19日
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