症例報告
多発腹部内臓動脈瘤で中結腸動脈瘤破裂を生じた1例
丹羽 篤朗, 三井 敬盛, 森山 悟, 石黒 秀行, 柳瀬 周枝, 大和 俊信, 柴田 和男, 佐々木 信義, 角岡 秀彦
豊川市民病院外科
中結腸動脈瘤の破裂により腹腔内出血をきたした症例を報告する.症例は60歳の男性.既往に高血圧.突然の腹痛と背部痛で発症し,疼痛が増強するため当院を受診した.腹部理学所見,血液検査で腹膜炎を疑ったが,超音波検査では大量の腹水を認め,腹腔穿刺にて腹腔内出血と診断した.造影CTでは脾動脈瘤と胃裏面から腸間膜左側に広がる血腫を認めた.緊急手術を施行し,中結腸動脈左枝の破裂による出血で破裂部を切除し止血した.病理組織検査では中膜壊死に伴う解離性動脈瘤と診断された.術後経過は順調で16病日に退院した.術後の血管造影で腹腔動脈起始部は閉塞し,上腸間膜動脈根部,下膵十二指腸動脈,膵十二指腸動脈弓,背側膵動脈,脾動脈,胃十二指腸動脈,中結腸動脈根部に嚢状,紡鍾状の動脈瘤が多発したきわめてまれな症例であった.術後18か月が経過したが,これらの動脈瘤による症状はない.
索引用語
middle colic artery aneurysm, visceral artery aneurysm, celiac artery occlusion
日消外会誌 30: 1962-1966, 1997
別刷請求先
丹羽 篤朗 〒442 豊川市光明町1-19 豊川市民病院外科
受理年月日
1997年4月23日
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