臨床経験
腹腔内癒着を伴う腹腔鏡下手術の臨床的検討
田中 淳一, 安藤 秀明, 伊藤 正直, 浅沼 義博, 小山 研二
秋田大学医学部第1外科
癒着性腸閉塞症を除く腹腔内癒着38例の腹腔鏡下手術症例を開腹手術既往群と腹腔内炎症群に分け,癒着の部位と程度,剥離の有無,および合併症を検討した.38例中24例(64%)で腹腔鏡下手術遂行のために癒着剥離を必要とした.上腹部手術既往例では中等度から高度の癒着のため癒着剥離を要したが,下腹部手術既往例では癒着部位が手術に影響が少なく,ほとんどの症例で癒着剥離を必要としなかった.腹腔内炎症例では中等度から高度の癒着のため癒着剥離を要した.2例の胆嚢総胆管結石症で高度炎症のため,開腹術に移行した(5.3%).胃切除術Blllroth-II法後の総胆管結石症の2例で,癒着高度で十二指陽を損傷したが,1例は術中に気付かず,術後開腹して修復した.他の1例は腹腔鏡下で修復した.腸管と腹壁との癒着剥離は安全に施行できるが,腸管相互の癒着剥離は腸管穿孔の危険性が高く,現時点では腹腔下癒着剥離の適応とはならない.
索引用語
laparoscopic surgery, intraabdominal adhesion, laparoscopic adhesiolysis
日消外会誌 30: 1967-1971, 1997
別刷請求先
田中 淳一 〒010 秋田市本道1-1-1 秋田大学医学部第1外科
受理年月日
1997年4月23日
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