原著
大腸癌肝高転移株の作製および生物学的特性の変化について
山田 靖哉, 鄭 容錫, 高塚 聡, 有本 裕一, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 西口 幸雄, 池原 照幸*, 奥野 匡宥**, 曽和 融生
大阪市立大学第1外科, 大阪市立十三市民病院外科*, 大阪市立総合医療センター外科**
ヒト大腸癌細胞株LMを用い,ヌードマウスの脾注,肝転移形成を3回および5回繰り返すことにより,細胞株LM-H3およびLM-H5を樹立した.LM-H3およびLM-H5はLMに比べて有意な肝転移能の増強を認め,電子顕微鏡による観察では,microvilliの増加を認めた.核DNA量および染色体数はLMに比べ,肝高転移株において減少した.培養上澄中のSLA産生量は,LMに比べ,LM-H3,LM-H5で,3倍および4.5倍の産生量を認め,Flow cytometryによる細胞表面のSLAの発現の検討でも,M.F.I.が,102.3±43.5,126.1±28.4,144.8±23.4と有意な増加を認めた.また,血管内皮細胞への接着性もLMに比べ,肝高転移株において有意に増加した.以上の結果から,このように肝転移形成を繰り返すことにより,LM細胞の肝転移能は増強し,また肝高転移株は親株とは異なったさまざまな特性を有すると考えられた.
索引用語
colon cancer, liver metastasis, microvilli, chromosome number, sialyl Lewis A
日消外会誌 30: 2169-2177, 1997
別刷請求先
山田 靖哉 〒545 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 大阪市立大学医学部第1外科
受理年月日
1997年6月11日
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